渡邉康太郎さんとドミニク・チェンさんが語る【特設棚】からの6冊(「本屋の歩き方vol.1」より)
青山ブックセンターにまつわるゲストが、書店ならではの魅力的な空間を紹介しながら、本の魅力について語る「本屋の歩き方」。
このnote版「本屋の歩き方vol.1」は、Youtubeで公開した動画を文字起こし・編集をし、書籍の紹介に関する部分を一部抜粋したものになります。
全4回にかけて、毎週木曜日夕方に計21冊を紹介していく予定です。
第1回(今回):特設棚
第2回:翻訳・海外小説
第3回:絵本・美術・漫画
第4回:哲学
紹介している書籍は、青山ブックセンターのオンライン通販サイトから特典付きで購入できます。再び安全に外出できるようになった暁には、ぜひゆるりと書店にお越しください。
今回紹介する特設棚の6冊
第1回は「特設棚」を中心に、ドミニク・チェン さん、渡邉康太郎さんが取り上げた6冊を紹介します。
■ドミニク・チェン『未来をつくる言葉ーわかりあえなさをつなぐために』
■渡邉康太郎『CONTEXT DESIGN』
■小倉ヒラク『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』
■小倉ヒラク『日本発酵紀行』
■小倉ヒラク『発酵する日本』
■佐々木康裕『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』
出演者(敬称略)
ドミニク・チェン:研究者
渡邉 康太郎:Takram コンテクストデザイナー / 慶應SFC特別招聘教授
山下 優:青山ブックセンター本店 店長
「本屋の歩き方」について
渡邉:さあ、今日の趣旨紹介をしてみましょうか。
渡邉:もともとは「ABCでトークイベントをやろう」って言っていたのが、2月の中旬ですよね。25日に企画されていました。
ドミニク:僕と康太郎さんのダブル刊行記念対談で、120席満席で。
渡邉:「事前に完売」という盛り上がりだったにも関わらず。
ドミニク:だったんだけど、コロナの状況を見て泣く泣くキャンセルに。モヤモヤしていたところ、ブレストしたんですよね。
渡邉:なんかやりたいよねと。
ドミニク:きっといま、みんな、なかなかお出かけするのも控えてるだろうから。本屋さんから足が遠のいている方も多いと思う中で、僕たちなりに何か応援したいということを話し、テストケースをやってみようということで、今日は青山ブックセンター本店さんに来ました。それで、それぞれのおすすめの本を3冊選び取り、紹介しようと。
渡邉:紹介しながら、この本屋の中をそぞろ歩き回ってみよう、という。
ドミニク:はい。やっぱりね、本屋を練り歩く楽しみってものは、Amazonでポチポチしてても味わえないものがあるので、その雰囲気だけでも、この動画を通して伝わったらいいなと期待しているところですね。
渡邉:本屋さんの醍醐味は「選書」はもちろん「棚づくり」とか「入れ替わりを眺める」とか「買わないところを眺める」とかにありますよね。だからこそ、来てみて歩き回って得られる発見とか、たくさん立ち読みできるとか、場所に来てこそだと思います。『地球の歩き方』ならぬ「本屋の歩き方」。歩きながら、やってみましょう。よろしくお願いします。
ドミニク・チェン『未来をつくる言葉ーわかりあえなさをつなぐために』
渡邉:これは最初から最後まで読んだ。
ドミニク:あっ、マジですか?すごいじゃないですか。
渡邉:これは、素敵な本ですね。
ドミニク:誰の本ですか(笑)?
渡邉:日本に住んでいるフランス国籍の人の本です。
ドミニク:なんか親近感が(笑)。でもこうやって本屋さんに平積みで置いて頂けるのはとても嬉しいですね。ありがとうございます。
渡邉康太郎『CONTEXT DESIGN』
渡邉:今日気づいたんですけど。(『CONTEXT DESIGN』を手に取る)
ドミニク:特装版じゃん!
渡邉:青いやつが一番手前にきている。
ドミニク:僕のお気に入りのバージョン。これは本当にここでしか買えない?
渡邉:そう、いま扱っている店はここだけですね(2020年5月24日時点)。
(2020年7月7日現在「発酵デパートメント」にも取り扱いいただいています)
ドミニク:特装版が前に出て、後ろが普通。もう特装版は一冊だけ?
渡邉:著者調べによると、ここにもあるし、あそこにもある。
ドミニク:ほんとだ。詳しい(笑)!
小倉ヒラク『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』
渡邉:ここ(店頭特設コーナー)は、来るたびに必ず立ち止まってしまう。
ドミニク:ここはやっぱり本屋さんの顔というか、推しコーナーですね。
渡邉:ね。雑誌のように切り替わっていくところ。
渡邉:あと、ここ(店頭特設棚)ね。
ドミニク:あっ、ここにも、どこかで見たことある人(小倉ヒラク)が。すごいね、『発酵文化人類学』もう3万部なんだ。
渡邉:売れてますか?
山下:売れてます。帯も書かせてもらって。
渡邉:ほんとだ。「青山ブックセンター本店山下さん」。
山下:特別受けました。
ドミニク:超ロングセラーですよね。2017年でしょ?2019年のランキングに2017年の本が入って、そして3万部で。
小倉ヒラク『日本発酵紀行』
ドミニク:そしてこちらが去年の『日本発酵紀行』。
渡邉:これはなんですか?
ドミニク:ヒカリエでヒラクさんがキュレーションした発酵展にあわせて作った本ですね。全都道府県を巡って、一品ずつ発酵食品をセレクトするというクレイジージャーニーの記録。
小倉ヒラク『発酵する日本』
渡邉:発酵エリアといえば。発酵×ABCといえば……。あっ!
ドミニク:これだ!これなんですか?山下さん。
山下:青山ブックセンターが出版社になりまして。出版社じゃなくて、出版プロジェクトですね。限定2,000部で好評発売中です。ここでしか買えません。
ドミニク:ABCでしか買えない!
渡邉:これ、あれですよね? ヒラクさんの撮影による写真を、藤原印刷さんが……。
山下:そうですね。書店と藤原印刷さんと小倉ヒラクさんだけで作ったという。
ドミニク:これ、さっき見せた『日本発酵紀行』を作る過程で、ヒラクさんが撮った写真を厳選した素敵な本ですね。僕も3冊買って、最後にそれぞれの写真の場所が一覧で出ているので、これだけで酒の肴になるっていうか。このリスト見ながら、にやにやしながら、ちびりちびり。次はここ行こうかねと。
渡邉:ああ。そういうことか。訪ねていくんですね。
ドミニク:これ青ヶ島とかね、ヘリコプターでしか行けないところとかもね、出てくるんですよ。
渡邉:しかも、このサムネイルリスト、見開きがいくつもあるんだ。僕も求めたんですけど、まだ、真面目に読んでなかった。
ドミニク:あと合言葉を言うとね。山下さんが書いたSNS公開厳禁の檄文がもらえるという。
渡邉:あっ、なんだっけ?それ発酵と関係ないんでしたっけ?
一同:笑
渡邉:それ公開してるんですか?
ドミニク:いや、SNS公開禁止。
山下:禁止でございます。
ドミニク:そう、過激すぎて。やばい。
渡邉:合言葉は?
山下:合言葉は公開してます
ドミニク:たしか、「発酵してます!」
山下:事前予約した人の合言葉です。
渡邉:そういうことね、もうないのね。そういえば、この前ここにきたら、ヒラクさんのサイン会やってましたよね?
渡邉:テーブル置いて、直接座ってるんですよ。本屋の人みたいな感じで。で、僕がきた時はね、5人くらい行列ができていて。サインしてもらいたいからって、予約した人はみんなレジのほうに行って「発酵してます!」って。僕は恥ずかしくて言えなかった。まあ予約してないから言ってもしょうがないんですけど。
一同:笑
佐々木康裕『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』
渡邉:この辺はビジネス系ですね。
ドミニク:ビジネス系、最近読まないなあ。
渡邉:これ、アクシスの長体ですよね?書体が。
ドミニク:え、マジで?さすがデザイナー。
渡邉:カバーデザインでは、グラデーション系も最近流行ってますよね。
ドミニク:グラデ系は確かに、最近。
渡邉:これは我がTakramの佐々木っていう人が書いた『D2C』。
ドミニク:いま、売れてるやつ。
渡邉:これもアンビエントな「オレンジと緑のグラデ」ですね。
ドミニク:ヒラクさんの展示も、赤と青の補色っぽいグラデでしたね。最近、たしかに増えてきている気がします。
渡邉:そういえば、かつてABCで働いていたある書店員さんが「納品されてきた本の段ボールをパカっと開けると、その本から漂っているオーラで売れるかどうかわかる」と言ってました。
ドミニク:なんでですか。それ、すごくないですか。
渡邉:それを聞いていたある編集者の人が「ひええ」って言っていた。
一同:笑
ドミニク:怖い。
山下:わかるんですよ。
渡邉:えっ、わかるんだ。
山下:良い本だからこそ、そのデザインになっているというか。デザインの論理、あまりわかってないですけど、やっぱりあるんですよね。
(第2回に続く)
次回予告(7/16(木)公開予定)
次回は「翻訳」「海外小説」をテーマに、ドミニク・チェン さん・渡邉康太郎さんが取り上げた5冊の本を紹介する予定です。
■ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』
■片岡義男・鴻巣友季子『翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり』
■原倫太郎・原游『匂いをかがれるかぐや姫〜日本昔話Remix〜』
■マシュー・レイノルズ、秋草俊一郎『翻訳 訳すことのストラテジー』
■柴田元幸(編集)『MONKEY vol.12 翻訳は嫌い?』
ドミニク・チェン さん・渡邉康太郎さんによるnote版「本屋の歩き方 vol.1」は、全4回にかけて、毎週木曜日夕方に計21冊を紹介していく予定です。次回もぜひご覧ください。
第1回(今回):特設棚
第2回:翻訳・海外小説
第3回:絵本・美術・漫画
第4回:哲学