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写真集ってどうやって探すの?/ Aoyama Book Column #9

こんにちは!青山ブックセンター本店の神園です。

Aoyama Book Column、今回のテーマは「写真集」です。

青山ブックセンター本店は、日本屈指の写真集・アートブックの品揃えを有しています。

ただ、五十音順でもなく、インデックスもないので、実際に棚の前に来たら「どうやって探すの?」「どういう並びなの…?」と思う人も多いかと思います。

ということで、今回はそんな疑問を解消すべく、青山ブックセンターの写真集の棚の並びについて詳しく紹介していきます!
(監修は写真担当の高橋さん。最後にはイチオシの写真集の紹介もあります。)


写真コーナーの4つの区分

ABCの写真コーナーは大きく4つの区分に分けられています。
まず、コーナーの顔となるのが新刊台です。

新刊台

新刊台には、基本的に国内外問わず、お店としてのイチオシの写真集新刊が並べられています。

読み物・技術系・ネイチャー系

次にコーナーの中を入って左側に、写真ジャンルの読み物や、撮影の技法やカメラについての本、そして自然風景や動物を映した写真集がまとまっています。

左の2つの棚には、カメラの使い方の本やカメラ雑誌、撮影技法についてのマニュアル本、映像・編集ソフトについての本、物撮り・ポートレートについての本、そして右下1列に写真にまつわる読み物が並べられています。
真ん中から3つの棚には、写真にまつわる読み物・写真論、動物や自然の風景を撮った写真集、絶景や廃墟、少数民族を撮った写真集などが並べられています。

国内の写真集

コーナーを入って右側には国内の写真家の写真集が並んでいます。
国内の写真集の棚は、インデックスがなく、作家の五十音順の並びでもありません。

なぜインデックスがないのか?

それは、文脈やまとまりを意識してそれぞれの写真集を並べているからです。

では、どのようにまとまっているかというと、ざっくり右から左へと巨匠クラス→ベテラン・中堅クラス→新しい写真家と並べられています。(並びの都合で、一部、例外もあります。)
そして、各列ごとに、文脈や写真のトーンが意識されています。

このような並べ方をしているのは、ネット検索ではたどり着けない新しい本の発見や、知らなかった本との偶然の出会いを創出するという、青山ブックセンターの理念が背景にあります。

なにはともあれ、ぜひご自身のフィーリングを信じて、気になった写真集を気軽に手にとってみてください!

それでは実際に棚を見ながら、どのような写真集が並んでいるか紹介していきます。

一番右の棚には、木村伊兵衛や土門拳、森山大道、荒木経惟といった巨匠たちの写真集がまとまっています。その隣の棚には、3.11を題材にした写真集や、日本の風景を映した写真集など、どちらかというと渋めなトーンの写真集が並べられています。
次に隣の棚には、川内倫子さんやホンマタカシさん、野村佐紀子さん、長島有里枝さん、上田義彦さんなど、ベテラン~中堅の写真家の作品が並べられています。ここも、各列ごとに写真のトーンが意識されていて、コンセプトのある写真集や、自分の周りの風景や生活を映した写真集、沖縄が舞台の写真集や、紀行写真集などが、それぞれまとまっています。
一番左側の棚には、ヌードや性をテーマにした写真集、蜷川実花さんや奥山由之さんの明るいトーンの写真集、ポップで変わったコンセプトの写真集や、身近な人を撮ったポートレートなど、様々な文脈でまとまっています。右側の棚に比べると、写真のトーンが比較的ポップで明るいです。

海外の写真集

最後に、コーナー奥の両サイドには海外の写真集がずらっと並んでいます。
海外の写真集の並びは、日本の写真集と異なり、基本的に写真家のファミリーネームのアルファベット順です。
これは、トーンや文脈で手に取られることの多い日本の写真集と比べて、海外の写真集は特定の作品を目的に探すお客さんが多いからです。(近年は写真集を探しに来る訪日外国人の方も多いです。)

例外的に一部、国際的な写真家のグループMagnum Photosの写真家の作品や、オムニバス写真集がまとまったゾーンなどが、アルファベット順とは関係なく並べられています。

面になっている写真集は基本的には準新作や新作で、平積みされているものにはロングセラーで人気のある写真家の作品が多いです。

写真担当が今おすすめする写真集

それでは最後に担当が今おすすめする新刊の写真集を紹介します。

木村和平さん『IRON RIBBON』

自身の作品制作のために訪れた老舗のホテルで、制作の合間にふと撮影したパートナーや情景を中心に構成された1冊。木村さんの写真は独特のトーンや視点が心地よく、温度や空気が身体に入ってくる感覚で好きです。

嶌村吉祥丸『what is good?』

写真の世界以外にもフレグランスのプロデュースや不定期ラーメン屋を開催するなど、マルチに活動する嶌村さんが活動10年目にして初めて出した写真集。普段のクリエイティブな雰囲気と変わって、気取っていない、パラパラ気軽に見れるのがまた良い写真集です。

ソフィ・カル『限局性激痛』

今は無き原美術館で観てからずっと忘れられず、当時買わず後悔していた展示図録の邦訳版。写真と対話によって失恋の痛みを治癒することを試みたその内容と赤が特徴的なこの本は、読む人によって痛みにも治癒にも繋がる魅力的な1冊です。

Yorgos Lanthimos『I SHALL SING THESE SONGS BEAUTIFULLY』

映画監督のヨルゴス・ランティモスが、自身の映画『憐れみの3章』制作中に撮影したフィルム写真で構成された写真集。監督独自の視点はもちろん、印画紙のバライタ紙を直接本にしたかのような紙の質感が良く、モノクロの写真がより引き立っています。